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そういうふうに考えると、われわれはまさに革命の時代にいます。18世紀から19世紀にかけての産業革命と比べてみてはどうでしょうか。ワットが蒸気機関車を発明し、大きな機械を据えた工場設備ができてきます。
そこで工場に基づく近代的な生産ができてきます。なぜわれわれは革命と呼んだのでしょうか。なぜただの技術進歩といわないのでしょう。ちゃんと理由があります。
第1にわれわれ世の中の概念を変えてしまったからだと思います。今みなさんが直面している企業、ビジネスはこういうものです。今日ある会社は明日もある、明日ある会社はあさってもある。つまり企業というのは継続企業、ゴーイング・コンサーンといわれるものです。しかし、産業革命以前の企業はそうではなかったのです。
東インド会社を例にとりましょう。東インド会社は、インドに航海に出る前に会社ができるんです。一航海終えて山分けしてすぐ解散する。インドに行くたびに作っては解散し、作っては解散する。これが普通の会社だったわけです。ところが、産業革命で大きな工場設備を作って固定投資をしてしまったから、解散できなくなったのです。時に経営者と所有者は変わることはあっても、企業そのものは継続するという継続企業が定着していきました。これに合わせて人間のライフスタイルが変わります。朝、家を出て会社に行く、夕方会社から家に帰ってくる。当たり前のライフスタイルですが、これを作ったのは産業革命でした。工場ができたからそこに行く。通勤という概念ができたのも産業革命だったのです。必然的に家庭の中での男女の役割もできてしまうのです。
同じようなことがすでに起こり始めているんです。何年も前ですが、ニュージャージー州にあるIBMの工場では仕事のやり方を変えたのです。従来の部長から課長、係員に命令を出すのではなく、一気に部長からEメールで係員に仕事を依頼する。だから会社に行かなくてよくなったのです。会社には3日に一回行けばいいということになりました。そうするとライフスタイルと概念が変わる。まず通勤定期を買わなくなる。3日に1度でいいならば、会社に置いてある机の数は3分の1になります。オフィススペースも3分の1。ささいなことですが、もはや会社の机の中に自分の机という概念がなくなるのです。
IT革命というのは皆さんの身近のところで生活を変えていくのです。今まで企業は消費者に売るためにものをつくっていました。でも消費者の顔は見えません。だから見込み生産しました。そして卸売業者を通してものを売っていたのです。しかし企業から単にものがうりだされていただけでなく、もう一つ重要なものも売り出されていました広告という名の情報です。企業というのはものと情報と両方を流すため、世の中で非常に大きな存在感を持ちました。しかしこの広告にインターネット広告が入るため、われわれの概念が大きく変わります。
インターネットの広告というのは、テレビとか新聞のチラシとかと根本的に違います。テレビの広告というのは流したらながしっぱなしなんです。見ているかどうかという確認はできません。しかしインターネットの広告は分かります。何人が見たのか、ヒット数で確認できます。YAHOO!という情報サイトは、このインターネットの広告だけで食べている会社です。1株1億円をつけました。日本で一番乗降客の多い新宿駅の約40倍の人が、このYAHOO!の情報サイトを見に来るんです。新宿駅のど真ん中のような場所に40個、しかも日本中に看板を立てたのと同一の効果が得られるわけです。
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