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  日本では今6兆円の広告費が使われていますが、インターネットの広告のウエイトはまだ1パーセント未満です。これが今後画期的に増えて、テレビ局や子音分社の広告の営業を基盤をかなり変えていくでしょう。
 ある自動車メーカーはインターネットを使って、特殊なスポーツカーの広告を打ちました。普通の大衆車であればテレビで流すのですが、特殊なスポーツカーだったのでインターネット広告をしたんです。それを消費者が見ました。かなりマニアックな消費者でした。そしてEメールを使って質問がきました。「このエンジンの構造はどうなているのですか。」えらく専門的な質問です。返事をしましたら、さらに質問がだんだんやってきた。ここでは革命が起こっている。もはやこれは広告ではないのです。立派な営業販売活動になっています。営業マンが家に行って営業活動をしているのと同じことなのです。
 ある不動産業者はこれをきっかけに、広告部門と営業部門を合体化させました。今まではお客さんの顔は見えていませんでした。メーカー1に対してお客さんNだったのが、今や一対一の関係に顔が見えるようになってきました。これがワン・トゥー・ワン・マーケティングといわれるものです。
 いよいよ消費者の方から企業に向かって「私はこういうものがほしい」と言う情報が流れるのです。この注文生産をインターネットでやる企業が現れ始めました。時計メーカーのシチズンです。シチズンはインターネットをつかって、注文生産の時計を8千円で売り始めました。自分はこういう文字盤にして欲しい、こういう針にして欲しい、 こういうベルトにしてほしい、全部自分で選べるのです。デジタルカメラで恋人の写真を送ると、一緒に貼り付けてくれるそうです(笑)。
 そういう注文生産が可能になった。ここで概念の問題が起こります。もはやこのシチズンには在庫という概念がなくなります。見込み生産だと在庫がある、注文生産だと在庫はいらない。そして注文生産の場合、壊れたら直してもらえます。ひょっとしたら、社会全体でみると廃棄物の量も少なくなってくるかもしれない 。こういう変化が積もり積もっていくのが革命のプロセスだと思います。

 今話した進化のプロセスの中でもう一つ重要なポイントは、どこを探しても卸し小売は出てこないということ。取引コストを限りなくゼロに近づけるというのがIT革命ですから、どうしてもそういうところの出番が従来に比べて少なくなる。やはり避けがたい事実だと思います。ただ卸し小売の機能がなくなるというのは断じてありません。日本にはすばらしい言葉があります。「そうは問屋がおろさない」(笑)と。
 こういう革命の時代であっても、我々の世代以上というのは特殊な成功体験を持っている。日本の経済発展は世界史に残る快挙だったと思います。これだけ短期間にこれだけ多くの国民が、これだけ豊かになった社会というのは、今まで世界の歴史の中でありませんでした。しかし、成功体験の中で残せるものもありますが、残せないものの方が多いと、自ら覚悟しなければならない。それだけ、若い世代を活用するという度量が、我々の世代に求められているのではないでしょうか。

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