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 労働生産性上昇のうち3分の2がITによって説明されます。良いといわれるアメリカの経済の大部分はITだったのです。「ソローのパラドックス」は完全に決着をみました。われわれも謙虚に受け入れなければならない、客観的な数字なのではないでしょうか。
 私は先ほどITというのは生活革命、ビジネス革命であるといいました。どういうことか一つ例をあげましょう。私がフィンランドの空港にいったとき、コーラの自動販売機が1台ありました。コーラを買おうと思った時、フィンランド人が横から携帯電話をとり出しました。そして自販機の前でピッピッピ…と機械を見ながら押し始めたんです。そしたらコーラが一本ゴトンと出てきたんです。これがIT革命の分かりやすい例だと思います。
 ちょっと話がずれますが、「経済のない1日はない」、これ最近の日経新聞のキャッチコピーなんですが、すばらしいキャッチコピーだと思います。なぜならばわれわれ生きていると必ず経済取引をやっているんです。ビジネスをするいうことは、細かい経済取引の積み重ねなんです。皆さんが今日ここにきているということも、経済取引の1つですよね。何かを犠牲にしてきているんです。
 そこで先ほどのコーラの自動販売機で考えると分かりやすいのです。今までのような形でコーラを買うとなると3つの取引が必要となってきます。第1の取引はどこかで銀行により、お金を引き出してくること。第2の取引はこのお金をコインに変えることです。第三にそのコインを機械に入れる。この3つの取引がなければコーラは変えなかった。その3つの経済取引がピッピッピ…で終わったわけです。
 IT革命の本質というのは、技術の問題は別として、経済行為に関して言うならば、デジタル技術を駆使することによって、経済の取引コストやトランザクションコストを限りなくゼロに近づける革命です。したがって、取引をしている国民1人1人が自分の生活を総点検して、発想を変え、この取引コストをどれだけゼロに近づけるかということ。だkらIT革命というのは国民運動だということを森総理に申し上げました。森総理はだんだんと理解してくれました。この時森総理は選挙の前だったためか、こういいました。「しかし選挙に結びつくかな」と。私は総理がお孫さんと一緒だったため、次のようなアイディアを出しました。
 例えば田舎におじいちゃんおばあちゃんがいます。東京に息子夫婦がいて孫が生まれたとしましょう。デジタルカメラを1台買いました。毎日1枚孫の写真を撮ります。そこに孫の写真を毎日ホームページに載せます。そうすると田舎のおじいちゃんおばあちゃん、ホームページを見ることで、毎日10円くらいで孫の成長を見ることができるわけです。それで慣れればいいんです。孫が字を覚えたら、Eメールを送ったらどうですか。孫の誕生日にはEコマースでショッピングして、プレゼントを贈ったらどうですか。」
 要するにIT革命の本質というのは、取引コストをゼロにするということにわれわれが向き合うことです。私の同僚で慶応大学の村井純というコンピュータ・サイエンティストがいます。名前はご存知の方多いと思います。この村井純こそが日本にインターネットを持ち込んだ人なのです。村井さんたちは、日本中がバブルで浮かれていた1980年代の後半に、この国土にやがてくるであろうネットワーク社会に備えて、まさしくネットワークを張ったのです。気が付いてみれば世界中に村井純がいたのです。この人たちが集まって、アメリカのイニシアティブのもとに1990年に各国のネットワークをつないで、今日の国際的なインターネットの原型ができたのです。
 この村井さんが面白い説を唱えいました。「日本は間違いなくインターネットの超大国になる国だ」と。理由は簡単です。インターネットの実態を考えてください。端末機の結合体、これがインターネットです。あなたのパソコンも、私のパソコンも、アメリカのもみんなつながっているだけです。呼び出し番号を決め、お互いに呼び出しあっている。それをデジタルな情報でやりとりしている、それだけです。
 その端末機を作る技術において、日本はまさしく世界一なのです。だから日本人全員がこのネットの参加者になって使い方を考える、本気で知恵をだすならば、日本は間違いなくインターネットの超大国になる。村井さんはサイエンティストですから夢がある。きわめて現実性のある夢だと思います。
 

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