< 加藤政変劇の評価 >
船田―私も山崎派に所属をしていますが、現職ではなかったのでお声がかからなくて、むしろホッとしたなと思っているところも正直あります。ただ、森内閣では持たないのではないかという考え方は非常によくわかりますし、それを閉塞状況の自民党内で、代えるべきだといい始めた勇気を、私は高く評価したいと思っています。ただ、いろいろ聞いていますと、内閣不信任案に賛成して、なお自民党にとどまるというのは矛盾しているのではないかと思います。森内閣を作ったのもわれわれ自民党員であるし、投票もしているわけですから、それが気に入らないという事で不信任案に賛成するということであれば、自民党の枠の外に出て議論しなければいけないし、行動もしなければいけない。
現に私は、7年前、小沢、羽田孜両先生とともに当時の宮沢内閣不信任案に賛成しました。その際自分自身が、宮沢内閣の経企庁長官だったので、自分で自分を不信任するわけにはいきませんから、まず、経企庁長官を辞任したうえで、内閣不信任案に賛成しました。その時には離党届を胸ポケットに入れて、投票後直ちに離党し新生党を作ったわけです。そういった一連の確固としたシナリオを持ってやらないと、挫折してしまうのではないかと思いました。
森本―私も外務省にいたので、加藤さんというのは役所の先輩なのですが、外務官僚の一番悪いところというのは、内政の戦略ができないことなんです。私は今回の一連の政治劇をどう見ているかというと、一つには自分の派閥というものにはきちんと説得をして、派閥が一丸となって加藤先生の言う通りにしようというダイナミズムを政治の場で実現しなければ、本当の政治家ではないです。やはり、派閥の中が分かれてしまうようでは、先行き見通しが甘かったと言われてもしかたがない。それと現在の政権で持たないんだという論理はわかるが、「70数パーセントの国民が政権を支持していない。だから今の政権はだめなんだ。」という論理は、評論家のやる論理でありまして、これは言わば本末転倒なんです。私は現在の政権のここがおかしいと思う、私が政権を担当すればこうするとちゃんと政策を具体的に言うべきです。国民の支持がこれだけ低いから、だから今の政権は悪いというのは、それはどこかの論説委員が言うべきもので、私は政治家の言うべきことではないと思うんです。(拍手)
山崎派は確かに同じ船に乗ったという、その船には実は穴があいていたというのは少し残念でしたが、その泥舟に一緒に乗ったにしては、山崎先生というのは派の中から多くの反対も出なかった。それは政党人として正しく評価されるべきであろうと思っています。けっこう傷ついたけれども男を上げたと思います。加藤さんは傷ついただけです。船田さんが反逆する時はよくよく戦略を打っておかないと、多くの人が路頭に迷うことになるわけです。〈笑い〉いくときには潔く、花と散ってもらわないといけないのですが、しかしやるからには、やっぱり戦略を練ってよくよくやらないとだめですよね。私は今回のことに関しては非常に失望して、この1日半くらいは虚脱感があってものを言うのも嫌なんですが、しかし人間はどんなに苦しくても生きていかないといけないと江藤淳先生が常に言っておられたことを思い直して、気持ちを改めて来たのです。
さて、こういう日本の政治というのが非常に閉塞状態にあって、これから船田さんに何をやってもらうかと考えるときに、やはり、日本でわれわれが一番関心を持っているのは景気や経済をどうやって立て直すかということです。この臨時国会でやろうとしている補正予算では来年前半の景気の掘り起こしというのは、少し無理だなと私は思いますし、多くのエコノミストがそう言っている。船田さんはこれからの日本の財政というものをどういうふうに考えているのか、是非ともお聞かせください。
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