< 集団的自衛権と憲法問題 >
船田―その日米関係の一番根幹に、日米安保条約があります。あるいは米軍の存在があります。冷戦後にガイドライン(日米防衛の指針)の見直しもやった。しかし日本としては憲法の制約もあって、日米安保条約は片務的である。日本はアメリカが第三国に攻められても、日本としては米国を助けにいってはならないという、憲法上の制約がある。日米安保関係にはこういう片務性がなお残っている。ガイドライン法整備などをやりましても、基本的なところは変わらないわけですので、これを今後どうやっていくのかが問われています。
かつて、「鳩羽新党」で一緒に議論していた鳩山由紀夫さんは、最近だいぶ変わりまして、集団的自衛権の行使をできるように、憲法の改正を視野に入れるべきだといっておられる。これは大変な驚きですが、私自身はあまり性急にことを進める必要はないと思います。片務性を双務性のあるものに少しずつ変えていくという努力が、結果として憲法改正にもつながるでしょうし、その前にガイドラインに従った日米協力関係を積み上げていく必要があるのではないか。あまり性急には求めないけれども、そういう方向性をきちんと示しておく。これが両国の関係にとっても大事ではないかと思っているのです。
森本―船田さんやいろんな先生方とずいぶん長い間議論をしてきました。当時、鳩山先生は今とは別のことを言っておられましたね。最近の鳩山発言は来年の参議院選挙や、来年以降の日本の政治をにらんで、憲法問題が重要な争点になると思っておられて、それを先取りしておられるんじゃないかなと思っているんです。鳩山さんの意見は国民一般の考えているところより2歩か3歩くらい進みすぎているのではないでしょうか。政治家というのは常に先を見通さないといけないのですが、我々がついていけない部分があります。私は集団的自衛権の問題については賛成なんですが、我々が今考えなければならないのは、ガイドラインを実行するために、日本を取り巻く周辺事態に日米がどう協力するか。日本が他の国から侵略を受けた場合に、どのように日米協力をするかという法整備をしなくてはいけない。周辺事態法だけで終わっていますが、肝心なところは今からであり、それは我々が「有事法制」という名前で議論している法案なのですが、全然国会にも提出されない。
ガイドライン審議の際、私は衆参両院に参考人として出たのですが、その時に、ガイドラインであれ日米協力であれ、政府が何を考えてガイドラインを作ったかというと、本当のねらいは、日本の国内に何か事態が起きたとき、例えば火山だとか、地震だとか、大災害だとか、いろいろなこの数年間にわたって我々が損害を受け、国民がいろいろ苦しんできたこの事態に、国として対応する法体系がないので、この法体系を作るためにガイドラインという日米同盟を持ちこんできて、それで法律整備を進めようとしてきた要素がある。したがって、集団的自衛権の前に、我々がやるべきことは、国の内外のいろいろな緊急事態を救うために、どういう国の体制がありうるのか。総理大臣が内閣を代表して国民の生命や財産を守るために、必要な権限を行使する。国民はそれに協力するという根本的な国の有様を決めた法律というものを、名前は何でもいいのですが、作るべきだと思うんです。
このような国の形だとか国の有様を議論すれば、おのずから現在の憲法のどこを修正するかというのが、結果として出てくるのです。憲法改正を議論するのではなく、国の形を議論することが先だろうと思います。憲法改正というのはむしろテクニカルな問題で、根本の有様は、どういう国として日本が50年、100年生きていけるのかということを我々が考えるものだと思います。だから私は、少し鳩山さんの手法には納得できないです。どうも、政治家の方々というのは、われわれとちょっとずれているところがある。ところで、今回の加藤紘一先生の政変劇についてはどう思われますか?
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