←前のページへ
次のページへ→
- 2 -

< 21世紀の国際情勢 >
 森本―暦の上から言えば、来年の1月1日から21世紀なのですが、実際に国際政治、国際経済をやっている人は21世紀の現象が起きていると考えて、仕事をしているわけです。確かに冷戦が終わってからの10年間を、われわれは「空白の10年」と言っています。冷戦時代というのはわかりやすく、東西両陣営と非同盟である第3世界の陣営と3つの陣営で国際社会が出来上がっていたのですが、東西対立関係が終わってしまうと、どのような新しい国際秩序が出来るのかは、まだ見えないでいる。その中でわれわれは新しい秩序を模索しているのです。つまり、我々は長く暗いトンネルの中にいて、トンネルの先にかすかに光が見えるのですが、しかしトンネルの先になにがあるのかはわからない。そのトンネルの中には魑魅魍魎が住んでいて、地域紛争やテロ、兵器拡散などいろんな問題がある。トンネルには時々光がさして、この10年間いい面もあったのですが、トンネルの向こうの21世紀というのはまだどうなるかわからない。
 わからないのですが、こういう時代がくるのかなと微かに思われるのは、一つは「グローバル化、グローバライゼイション」というのがすごい勢いで進展しています。特に現代では金融だとか情報だとか技術の分野でそれが顕著ですが、そのことによってわれわれの生活が便利になり、豊かになり、より発展することが期待できそうなのです。しかしこのグローバライゼイションというのは光だけではなく影の部分があって、この影の部分にわれわれが今日苦しんでいる。影の部分というのは紛争や難民、テロ、国際犯罪とか環境の問題、兵器の拡散だとかいろんな問題が拡大して、どんどん豊かな国とそうでない国の格差が広がっていくということです。そういったグローバル化がもたらすマイナスの要因、影の部分を国際社会は皆で協力してどうやって乗り越え、克服するかという問題に直面しているのだろうと思います。
 しかし、この「空白の10年」というのは日本にとっても深刻な問題を提起した。戦後半世紀、先進国に追いつけ追い越せと努力し、ここまで来たのですが、その間1951年にサンフランシスコ平和条約に署名したと同時に、「日米同盟」という選択をしたことが今日の繁栄をもたらした最も大きな要因だったと思うのです。その意味において、戦後の50年間は間違った選択をしていなかったと思います。問題は、これから日本はどう生きていくかという問題だと思いますが、船田さんは如何ですか?
 船田―「グローバリゼーションのもたらす影」という表現をされましたが、私はその一方で「ローカリゼーション」というものもあり、グローバリゼーションとローカリゼーションという両極端の間に住んでいるなという感じがします。中東紛争も結局、グローバリゼーションが一方で進みながら、民族や宗教といった地域的な対立要因が表に出てきている。かつての東西冷戦構造の中で地域紛争が起こったら、アメリカも旧ソ連も困ってしまうので、うまくそれぞれの友好国を米ソ対立構造の中で押さえてきた。しかし、今やその箍(たが)が外れたので、宗教や民族を要因とした地域紛争が起こりやすくなっている。まさにグローバリゼーションとローカリゼーションの同時進行という感じがします。
 21世紀は少しづつ光が見えてきているというお話ですが、予測がなかなかしにくい時代だと思います。ただその中で、日米関係は最も世界の中で安定した二国間関係である。ブッシュ候補(当時)の言葉の中に、「アメリカにとって最も重要な二国間関係は日米関係だ。」というのがありました。ですから、日米関係を今後のグローバリゼーションあるいはローカリゼーション同時進行の中で、日本が世界との付き合いをする中でうまく利用していくことは、国際情勢をマネージしていく上ではいいことではないかと思います。

←前のページへ
次のページへ→
←本・エッセイのTOPへ


HOME今後の予定はじめのOpinion政策提言本・エッセイはじめ倶楽部経歴趣味Linkはじめに一言

Copyright(c)1996-2003 Hajime Funada. All rights reserved.