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生きた政治学ノートU
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4.今後の政治や行政の進むべき方向について

 これまで述べてきたような、政治改革をきっかけとした平成5年革命は、38年間続いてきた自民党政治を一度は退場させた。その後ほどなくして復権して、表面上は革命などなかったかのような平静さを装っているが、実は派閥の弱体化や有権者の政治に対する意識の変化など、底流では大きな変化が起こりつつある。この章では現在から将来にかけての政治の底流での変化を指摘してみたい。


(1)間接民主制から直接民主制へ(代議制民主主義から直接民主主義へ)

変化と原因―

1.有権者の多くはこれまで、自分たちの代表として選んだ議員に、予算配分や法律改正などの政策決定を委ねることを当然と考えてきた。しかし最近のエイズ禍やヤコブ病、ハンセン病問題、BSEへの行政の対応の不手際などで 政治や行政に対する国民の不信感が増大し、有権者自らが政策の一部あるいは全部を決定したいとの意識が強くなった。それが「首相公選制」や「住民投票」導入への世論の高まりや、「e-ポリティクス」と呼ばれるインター ネットを利用した世論形成や政治活動の高まりへとつながっている。

2.政治や行政の各種制度が複雑になりすぎ、有権者には政策決定の全体像が見えにくくなっている。このため有権者は情報不足を認識することとなり、行政情報の公開を求める動きが盛んになっている。

メリット―

1.直接民主制への移行は、有権者の政治や行政へ参加意識を高めたり、一般的に有権者の満足度が上がることが予想される。

2.民意の反映という観点では、従来より迅速に、かつ詳細に行われることが予想される。

デメリット―

1.「首相公選制」の導入などによって、有権者の政治に対する人気投票の色彩 が強まり、健全でバランスの取れた世論が形成されにくくなり、安定した政治運営が阻害される可能性がある。

2.議会活動が軽視され、民意の集約がしにくくなり、「船頭多くして、舟山に登る」という状況が生まれる。

3.結果を急ぐ世論の圧力によって、中長期的な行政上の計画やプロジェクトの着実な実施よりも、短期的で刹那的な政策のほうが好まれがちとなる。

改善点―

1.有権者に直接意見を聞くべきものと、議会で議論すべきものを適切に仕分けして、安定した政治運営を図る。
2.議会の役割を強化して、議員がきちんと有権者の民意を汲み取る努力をする。

3.代議制民主主義政治への信頼を回復する。

4.政策決定過程に関する情報を出来るだけ公開して、有権者の不満を解消する。


(2)官から民へ、公から私への流れ

変化と原因―

1.有権者のほとんどが、いままでは官に任せていればそれでいいと感じていたが、いまは官が信用できないとか官は非効率であるといった理由から、官から民へ、公から私への流れが加速しつつある。

2.外務省をはじめとする官僚の相次ぐ不祥事や、農林水産省のBSE問題への対応の不手際などによって、国民の行政への信頼が急速に下がっている。

3.高速道路建設や大規模工業団地建設における税金の無駄遣いなどがマスコミの標的となり、公共事業性悪説が蔓延したり、一般的に公の事業は民間に比べて非効率であるとの認識が広まり、郵政事業や特殊法人の民営化への要望が高まっている。

4.国民が身近に接触する市町村役場での窓口サービスが相変わらずほとんどの場所で9時〜5時と、利用者の利便を考えていないと感じている。

メリット―

1.民営化によってコストの削減や人員の削減が図られ、行政が行う事業の一部が効率化される可能性がある。かつての国鉄からJR各社への分割民営化、電電公社からNTT東西への分割民営化がその好例である。

2.行政サービスが利用者本位となり、サービスの質やスピードの向上につながる。JRの駅員の応対が特段に丁寧になった経験を、多くの国民が享受している。

デメリット―

1.民営化によって不採算部門が切り捨てられたり、サービスが低下する可能性がある。

2.民営化によって不採算部門が行政に押し付けられる場合がある。

改善点―

1.官はユニバーサルサービスや本来的な不採算部門を担当するなど、官と民の分野調整をしっかり行うことが重要である。

2.公共事業についてはその総額を抑制するか、事業ごとの計画を見直すことによって、無駄を省く努力をする。またそれが国民に見えるようにすることが肝心である。

3.行政の仕事の一部を出来るだけ民間にアウトソーシングする。NPOや特殊会社を育成して行政サービスの受け皿とすることが効果的である。
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