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生きた政治学ノートU
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3.政治とメディアのかかわりについて

(1)選挙報道のあり方について

アナウンスメント効果とは?―

 戦後の日本や世界各国では、マスメディアの発達は急速だった。このためその国の政治や有権者の意思決定に、メディアの影響を無視することは出来なくなったし、メディアそのものが世論を誘導する現象すら散見されるようになった。
 わが国では現在、各級選挙の投票日一週間前に世論調査が実施されるのが通例で、その結果の一部が投票日を待たずにメディアを通して公表されることが多い。その際、有利と報じられた候補者が選挙運動のテンポを緩めたり、有権者がそれ以外の候補者に票を移動させる現象を誘発して、報道されなかった場合とは異なる結果をもたらすことが知られる。これらの現象を「アナウンスメント効果」と呼ぶ。

アナウンスメント効果は一様でない―

 しかもこの効果は一様でないところが事態を複雑にしている。例えば衆議院の中選挙区制度など一選挙区で複数の候補者が当選できる選挙では、有権者は「判官びいき」の心理が働き、優勢と報じられた候補者とは別の候補者に投票しがちであるが、知事や市町村長の選挙や小選挙区制度など一人しか当選できない場合は、優勢が伝えられた候補者に票が流れる、いわゆる「雪崩現象」を起こすことが多い。


(2)世論調査の限界

 選挙に関する世論調査には、常に時間の制約がつきまとう。そのためサンプル数が少なすぎたり、抽出方法が不備であったり、本来は面接調査すべきところを電話調査で済ますなど、結果に誤差を生じる可能性が高い。
 また根本的な問題として、有権者の回答が実際の投票行動と違っていたり、故意に本心とは違った回答を行うなど、世論調査の精度を低下させる傾向も見られる。さらに最近の無党派層の増加などで、有権者の投票態度が選挙直前になっても決定されず、調査結果に「わからない」「N.A.」が多くなり、これも調査の精度を低下させている。
 最近盛んに実施されるようになった「出口調査」は、投票を終了した直後の有権者にインタビューするため、精度は非常に高くなる。しかしその結果判明はせいぜい実際の開票結果判明の数時間前であり、マスコミの当確打ちや候補者陣営の参考にはなっても、一般有権者にとってはほとんど価値のないものである。


(3)世論調査報道の制限

 このようにアナウンスメント効果を持つ、選挙に関する世論調査の公表については、従来から一定の制限を加えるべきとの議論がある。すでに制限を加えている外国の例としてはフランスがある。投票日の2週間以内は、世論調査の結果公表はもとより選挙の動向に関する一切の報道を禁止する法律が存在する。
 また本来、候補者全てが報道においては平等に扱われるべきだが、平成5年7月の衆議院総選挙では、テレビ朝日の報道局長が当選させたい候補者4人を恣意的に選び、選挙報道の中での登場回数や放映時間を他の候補者に比して優遇するよう、現場に指示したという事件が発生した。同報道局長は後の国会の予算委員会で槍玉に挙げられ、その職を辞することとなったが、選ばれた4人は全て上位の成績であった。あらためてマスコミの報道の力を再認識させる事件だった。マスコミの政治的中立が如何に大切かを認識すべき事件だった。


(4)インターネットと政治の関わりについて

 1996年当時、現職の政治家でインターネットホームページ(HP)を開設していたのはほんの一握りで、筆者を含め全国で数人だけだった。その後開設は急速に増え、現在の開設議員は衆議院議員で318名(約64%)、参議院議員で128名(約53%)にのぼっている。
 しかしながらHPを開設している議員が、それを十分に活用しているかいうと、必ずしもそうではない。若手議員を中心に有権者とのメールのやり取りにやチャットによって、有権者の意識や意見の把握に活用している例が多いが、中にはHPを開設したはいいが、更新をほとんど行っていない例も多く見られる。
 一方、候補者のHPの選挙運動期間中の対応について、未解決な点が多い。総務省は「HPが不特定多数の有権者への文書図画の配布に当たる。」と解釈して、当初はHPの閉鎖を示唆していた。しかしながらそれではあまりに厳しすぎるとの多くの議員の指摘を受け、現在では期間中にHPを開いていてもいいという指導になった。しかし画面や文面を一切改変・更新しないことや、電子メールの交換はしないことを条件としている。今後はインターネット利用の政治活動がますます盛んになることを想定して、HPによる明らかな投票依頼は禁止するとしても、常識的な改変や更新は認めるべきと考える。


(5)インターネット政治のメリット・デメリット

 HPをはじめとするインターネット利用の政治活動のメリットは、まず政治家個人の政策や意見が有権者へ発信しやすくなること。またそのことを通して、有権者と政治家との距離を一気に縮めることができること。一方で有権者や市民の意思を、政治が迅速に受け止められることが挙げられる。
 一方デメリットとしては、「直接民主主義」の傾向が強くなり、代議制民主主義の手続きが疎かにされる可能性があること。あるいは特定の政治家に対する攻撃や誹謗中傷が展開されたり、ネット上における有権者の意見や言葉遣いが極端に攻撃的になる傾向にあることなどである。政治に限らずネット上のエチケット、すなわち「ネチケット」が有権者には特に求められる。


Coffee Break V

どうすれば宇都宮を立て直せるか?

 いま地方都市はどこでも景気低迷に悩んでいる。その中でも宇都宮市は、近隣の水戸や前橋、郡山に比べて落ち込みが大きい。人口は45万人と他の都市を圧倒しているにもかかわらずである。確かに道路や下水道などの社会インフラ整備、すなわち「力仕事」では相当な投資をしてきたが、「知恵の仕事」は必ずしも十分ではなかった。つまり都市の魅力をどのように作るか、他の都市との違いをどこに求めるかという分野で、宇都宮は遅れをとっている。
 最近「都市間戦争」という言葉が聞かれるが、それは都市の魅力の競争でもある。また都市の魅力とはそもそも、都市の誕生の原因にも帰着する。都市の魅力にはおよそ次の4項目が考えられるが、宇都宮の現状とあてはめたらどうだろうか。

1.便利さ…宇都宮には従来からJR東北本線(宇都宮線)が通り、昭和57年からは東北新幹線が開通した。東京との時間距離が大幅に縮まり、便利さは高まった。しかし一方で約4割の新幹線が宇都宮を通過するなど、便利さが宇都宮を越えてしまう危険性も生まれている。またパリの環状道路に比して400メートル短い宇都宮環状道路(宮環)が整備されたが、立体交差工事の遅れで新たな交通渋滞を誘発したり、市内の主要道路で拡幅の遅れが目立つなど、便利さが今一つ実現できていない面もある。

2.快適さ…市中心部から10分も車を走らせれば、豊かな自然環境や農村部が広がる。海はないが北関東道路が完成すれば、茨城県の海に1時間ほどで行けることになる。また自然災害が少ないことと、冬季の晴天率がかなり高いため、経済活動が天候によって左右されることが少ない。但し冬の冷え込みが強く、寒冷地手当てが支給されるくらいだが、個人住宅の寒さ対策が疎かなため、脳卒中が原因で自宅で倒れるケースが大変多い。

3.賑わい…宇都宮市内には幾つかの飲食店街があるが、その店舗数は他の同規模都市の中では比較的多い。不況の影響で集客数はダウンしているが、飲食店街の賑わいは依然として衰えない。現在宇都宮市は市当局と商工会議所などが音頭をとって、「カクテルのまち」「餃子のまち」をPRしている。「餃子のまち」としてはかなり全国的に浸透している。

4.美しさ・文化の薫り…宇都宮の中心部の街並みは、再開発事業の遅れや空き店舗の増加などにより、必ずしも美しいものとはなっていない。また「まちのへそ」といえるような場所や施設に乏しく、宇都宮城祉である御本丸公園の整備も遅れている。世界的なジャズミュージシャンの渡辺貞夫氏の出身地でもあるので、最近はジャズをテーマとした町おこしに取り組み始めた。

 以上の4つのポイントについて宇都宮の評価してみると、1.が70点、2.と3.が90点、4.が50点というのが筆者の点数である。今後の都市間戦争で宇都宮が競争力を増すには、やはり4.に掲げたような、まちとしての美しさや、文化の薫りを放つような施設やイベントを集中することが重要である。


Coffee Break W

NPOとは?

 Non Profit Organaizetionの略称であり、直訳すれば「非営利組織」、また法律用語では「特定非営利活動法人」である。公的な権限を持ち税金によってまかなわれる「官」ではなく、また営利活動を専ら行なう民間企業でもない。営利を求めない民間組織である。ボランティア活動を行なう団体がその典型だが、その他の分野でもNPOは生まれている。

納税者から官へのお金の流れが、変化する可能性

 国や地方自治体は国民や企業から税金を徴収して、様々なサービスを提供している。しかし最近は行政サービスに対する不満や不信感が多くなり、自分の税金を無条件に支払うことに対して、快しとしない国民が増えていることも事実である。
 このような中で、いま盛んに生まれつつあるNPOに寄付をして、そこから様々なサービスを受けることによって、費用対効果の観点での満足度を高めようとする動きが出始めている。まだまだNPOの種類や数は不足しているが、もう少しこの市場が成熟してくれば、自分の納める税金が何に使われるか分からない制度より、自分の寄付金が目に見えるサービスとして生かされる制度を選択する国民が増えてくるのではないか。お金の流れが劇的に変化する可能性がある。

NPOを育てることが、社会の不活性化に歯止めをかける

 NPOに関する法律が出来てまだ日が浅い。NPOに法人格を与え不動産の所有をはじめとする社会的地位を向上することとなったが、資金的には苦しいNPOが多い。今後の課題は国民が一定の条件をクリアーしたNPOに寄付をした場合、所得控除されるシステムを作ることである。
 NPOに寄付することは、国民が自分の意思で税金の使い道を選択することと同じ意味であり、行政よりもより効率的で受益者の満足度が高い公的サービスが実現する可能性がある。

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