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生きた政治学ノート


(3)予算の決定過程
予算決定のスケジュール―

 通常の予算編成では、7月下旬に概算要求基準の決定→8月末に各省庁の概算要求の財務省への提出→10〜11月に財務省の各省庁からのヒアリング→12月20日前後に財務省原案の内示→その後数日間政府与党による復活折衝→12月25日前後に政府原案の決定に至る。

概算要求基準の限界―
 予算の概算要求基準とは、社会保障費や公共事業費などの各分野ごとに、来年度は今年度に比べてOO%の伸び、OO%のマイナスといった基準を設定し、各省庁はその枠内で財務省に予算要求をするという仕組み。「シーリング枠」とも言う。予算を根っ子から積み上げて要求するのでは大仕事になってしまうため、概算要求基準によるというのは、大変便利な方法である。一方この方法のデメリットは、毎年の予算編成が微調整に終始してしまい、思い切った予算配分の見直しが出来ない。
* 概算要求基準の限界は公共事業の中の配分にも及んでいる。河川改修や道路整備、区画整理事業など、より細かい項目に至るまで、微調整に終始している。公共事業の分野ごとのシェアは、ここ10年間で最大でも2、3%しか増減していない。

茶番劇の復活折衝―
 予算の復活折衝とは、財務省原案に対して、各省庁が自民党の各部会と連携しながら、要求額から削られた部分を中心に、復活を財務省に働きかけることである。「族議員」の腕の見せ所でもある。しかし復活折衝の過程はほとんどシナリオが出来ており、どのタイミングで復活金額を出すかさえも決められていることが多い。我々は役人が復活金額をどこに隠しているか、「ポケット探し」を見抜く競走をやったこともある。これでは体裁のいい茶番劇であり、利益集団や業界に向けて、「我々ががんばって復活させた」と見せるためのパフォーマンスに過ぎない。

予算単年度主義の限界―
 予算編成は全ての項目にわたって、毎年審査し決定しなければならない。これを予算の「単年度主義」という。この制度は継続的・計画的な予算の執行を妨げかねない。政府はこれまでも「道路整備5ヵ年計画」や「保育対策10ヵ年戦略(エンゼルプラン)」など、各分野に5〜10年計画を設定しているが、そのものは強制力がなく、毎年度の予算編成の目安に過ぎない。
* 例えば科学技術振興基本法に基づき、平成9年からはじまった「科学技術振興5ヵ年計画」では、計画期間内に17兆円を計上するはずだったが、各年度の当初予算の合計は14兆円強にとどまった。但し、数度にわたる補正予算で3兆円近くを上澄みして、何とか17兆を確保した。

税金はどのように使われているか―
 政府予算の実態について、国民はもっと関心を持つべきではないか。自分の納めた税金が、どの分野にどのように使われているかにもっと関心を持ち、政治に積極的に関与してもらいたい。
 *例えば我々が納めた税金1万円がどのように使われているかというと―

社会保障関係費 17.6兆円 2128円
国債費 17.2兆円 2079円
地方交付税 16.9兆円 2044円
公共事業費 9.4兆円 1137円
教育関係費 5.5兆円 665円
防衛関係費 5.0兆円 605円
恩給費 1.4兆円 169円
科学振興費 1.1兆円 133円
経済協力費 1.0兆円 121円
エネルギー関係費 0.6兆円 72円
中小企業対策費 0.2兆円 24円
その他 6.8兆円 823円

82・7兆円 10000円

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