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我々が目指す政治とは

平成23年2月
船田 元
1.現状の政治に対する危機感

 一昨年8月、55年ぶりに本格的な政権交代が実現した。戦後の安全保障の確保とめざましい経済成長を実現した自民党政権だが、 国民の多くは長老支配や官僚依存など長期政権の弊害に嫌気を差していた。「政権交代によって現状を打開できるのではないか」 という国民の強い期待感が、民主党に政権を委ねたと言っても過言ではない。

 しかし発足以来、一年半も経過した民主党政権には、以下のような諸問題が次から次へと発生し、混乱と迷走を続けている。民主党に 投票した国民の多くが、「こんなはずではなかった」と、期待を失望に置き換えつつある。















生産性向上に結びつく科学技術への投資や、世界をリードする産業育成など、政府は明確な成長戦略を持ち合わせない。 したがってリーマンショック以来の景気低迷から立ち直る機会を逸して、景気の「二番底」を迎えようとしている。
政府は財政再建への道筋が示せず、昨年度予算では38兆円の税収入に対し、44兆円もの赤字国債を発行せざるをえなくなった。 国民の多くに近い将来の財政破綻懸念を抱かせ、国際的価値を損ないつつある。
政府は「子ども手当て」や「農家戸別所得補償」など、財政規律を度外視したバラマキ政策に汲々として、国民の間にモラル ハザードを引き起こし、日本人の美徳である勤労精神が崩壊しつつある。
どの国の政権も、国政の中で最も重視すべき安全保障政策だが、政府の普天間基地移設をめぐる迷走で、死活問題である日米同盟 関係を大きく揺るがし、国民の不安が増大しつつある。また尖閣諸島沖の漁船衝突事件や、北方領土へのロシア大統領訪問への対応など、 迷走が続いている。
民主党内は自由にものが言えない、いわゆる「小沢ファッショ」という状況に陥っている。小沢氏の強制起訴という事態に対しても、 民主党の対応は混乱を極めている。
菅総理のリーダーシップが発揮されず、マニフェストの実行が危ぶまれ、民主党政権の正統性に疑問符が付けられている。


 一方、野党・自民党も、衆議院選挙敗北のショックから未だに立ち直れず、政権奪還のための明確な青写真が示せないでいる。 また国会審議では「政治とカネ」や政権の失策を追及するに留まり、国民にとって大切な骨太の政策論争が行われてこなかった。 そのため、民主党の支持率が急落しているにもかかわらず、自民党はその受け皿になりえず、残念ながら支持率は低迷したままである。

 与野党ともにこのような現状にあるので、多くの国民は政治に対して閉塞感を感じ、失望感すら覚えている。国民の政治離れが心配されるが、 それ以上に、このままの政治状況では、日本そのものが崩壊の道をひた走っていくのではないか、との危機感を我々は強く感じる。

2.我々が目指すべき「新しい政治」とは

 多くの国民は、現在の政治の危機的な状況を打開し、わが国の将来を誤りなき方向に力強く牽引していく、「新しい政治」のスタート を強く求めている。いま我々が目指すべき「新しい政治」の理念とは、






明確な成長戦略を策定して、全体のパイを出来るだけ大きくして、国民生活の水準を引き上げるとともに、個人間や地域間の格差を是正 することに全力を尽くすことである。
国の存立の基本である安全保障政策をきちんと立て直す。また国連を中心とする世界の安全保障活動に積極的に参画する。そのための 憲法改正は堂々と主張し、その実現を図ることである。
国民に媚びたバラマキの政治を即刻中止し、国の財政をきちんと立て直し、持続可能な国家運営の道筋を提示することである。

 このような「新しい政治」を実現していくには、まずいまの自民党が保守政党としての矜持や立ち位置をはっきりと示すべきである。 「保守」とは、国家や国民にとり大切なものを、とことん守りぬくことである。それは国家の安全保障であり、地域社会や家族の絆である。 わが国が世界に誇りうる伝統や文化であり、国民の節度やモラルである。大切なものを守るには、変えるべき制度は大胆に変えるのが真の 「保守」である。

 またこれまで、長期政権を担当したノウハウを駆使した安定感のある政権運営や、官僚の力を適切に活用したバランスのよい行政展開は、自民党の得意技であったはずだ。自民党が「新しい政治」を担っていくためには、その良い部分を自信を持って拡大すべきだ。一方、政権のたらいまわしや長老支配といった負のイメージを、きっぱりと取り払うべきである。

  我々は自民党の建て直しに、党の内外から叡智と努力を提供することを惜しまない。自民党が本来の保守政党として立ち直ることが出来れば、これに優るものはない。しかしながら昨今の自民党の様子を見るに、政権を失って以来、思い切った反省と改革を怠り、旧態依然の顔ぶれと手法に頼り切っている。今の自民党の姿勢で政権奪還を望むのは「百年河清を待つ」に等しい。

  我々は勇気を持って自民党を大改造し、保守勢力の復権を果たし、高い理想に燃えた「新しい政治」を目指さなければならない。それがこの国を救う唯一の道だと考えるからである。しかしながら今後の自民党がそのような使命を果たしえないのだとしたら、保守本流を標榜する、より幅広い、新たな「受け皿」の結集をも視野に入れなければならない。

  以上のような将来展望を抱きながら、当面は、この国のかたちをしっかりと描き、世界から信頼される国家として、先進国の一員として元気に生き残っていくために、まず我々は志を同じくする仲間が相集い、本音で語り合い、骨太の意見を闘わせることの出来る場を作っていきたい。

  国の将来を憂える多くの国民諸氏の、温かいご理解とご支援を切に願うものである。

3.「新しい政治」の政策の方向

(1)我々は、国際社会から求められる安全保障、経済、金融分野での役割をきちんと果たし、国際社会における日本の地位と価値を維持する。




国際金融市場において安定した資金供給を行うほか、金融分野の国際ルールの構築に主導権を発揮する。
普天間基地の移設をめぐるごたごたを一日も早く解決し、信頼性のある日米安保体制を取り戻す。沖縄の負担を日本全体で共有する。
自衛隊を憲法の中に明確に位置付け、国連の平和創出活動に積極的な役割を果たす。

(2)我々は、「結果の平等」よりも「機会の平等」を保障し、勤労の精神を尊重し、働く者が正しく報われる社会を実現する。


税制や補助金制度、公私の奨学金制度を適切に組み合わせて、国民の教育費負担を軽減する。
成長戦略の実行や中小企業育成を通じて、地域や若者に対する雇用機会を増やす。
非正規社員の正社員化を行う企業に補助金を支給したり、労働者派遣の適切な運用を図ったりして、働く人々の環境を改善する。

(3)我々は、人生後半の社会保障とともに、「人生前半の社会保障」を重視し、若年世代の教育の機会や雇用機会を確保し、若者に将来の夢を与える。


職業訓練制度を充実して、若年層のキャリアアップを図る。
新規採用者の年齢制限を緩和し、就職活動の機会を保障する。
民法を改正して、選挙権や成年年齢を引き下げ、若年層の社会的責任を明確にするほか、その社会保障を充実する。


(4) 我々は、「自助」の精神を大切にし、それで補えぬ部分は「共助」、「公助」を働かせるなどして、国民のモラルや節度を守る。


年金制度は将来の予想がつきやすいので、「自助」や「共助」を中心とした制度に再編し、介護保険や健康保険制度は予測がつきにくいので、「公助」を中心とした制度に再編する。
わが国で育ちにくいとされる「共助」の部分を育成するため、町内会や NPOの法人格や優遇税制を強化する。


(5) 我々は、将来世代にツケをまわさぬよう、国と地方の「財政規律」を守りつつ、必要不可欠なときは、効果的で機動的な財政支出を果敢に行う。


•財政健全化法案を国会に提出する。
おおむね 10年後の赤字国債発行額をゼロにする。


(6) 我々は、「給付」やバラマキ政策を重視するのではなく、国民の「給与」が増えることを目指し、デフレ対策を徹底し、明確な成長戦略を示す。




子ども手当ては即刻廃止し、その原資を保育所の充実など待機児童の解消を図る。幼児教育の負担軽減を図る。
世界の景気回復を牽引する成長率を目指し、卑しくも景気の足を引っ張るという不名誉な役割は果たさない。
インフレターゲット論」を検討し、デフレ克服のための金融・財政政策を実施する。


(7) 我々は、「コンクリートから人へ」ではなく、「コンクリートも人も」大切にして、国民の生命財産を守り、生活の改善を図る。

「人の命を守る」公共事業、「人の生活を改善する」公共事業は、今後とも一定水準を維持する。
道路建設や空港建設などに際して、費用対効果手法を駆使することにより、無駄な公共事業は徹底的に排除する。


(8)我々は、国の仕事をすべて「コスト」とは考えず、国富を増大させる科学技術や教育などの「投資的経費」に対しては、積極的な資源配分を行う。


世界をリードする科学技術の効果的な推進や、基礎から応用に至るまでのプロセスを、官民挙げて強力にサポートする。
国家予算に占める教育費の割合を、現在の 3.5%からOECD平均の5%に引き上げる。


(9) 我々は、国や地域社会、家族の絆を守るとともに、国や地域の伝統や文化、国民の節度やモラルなど、目に見えないものもしっかり守る。


外国人地方参政権付与や、選択性夫婦別姓制度の導入には明確に反対する。
国民共有の財産である文化財を、国の責任で保護していく。
各種の文化活動に対して、国は積極的な支援を行う。


(10)我々は、公務員の天下りや特権は許さないが、その優秀な「人財」を活用することにより、国益を重視したバランスの取れた行政を実現する。


公務員の天下りは一切認めない。一方で定年まできちんと働けるよう、公務員制度や慣例を是正する。
公務員を省庁ごとに採用するのではなく、政府が一括して採用・配置を行い、省益でなく国益を重視する公務員を育成する。


4.自民党執行部に対する要望

 自民党が唯一の健全な保守政党として、二大政党政治の一翼をしっかりと確保していくため、またわが国が先進国の一員として世界をリードする国であり続けるため、さらには日本から世界に対して「日本の危機」を発信しないため、次の諸点を自民党本部に強力に要請したい。

(1)




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(6)

戦後長く与党としてその重責を果たしてきた自民党だが、その既得権益をかなぐり捨て、本物の野党として与党との堂々たる戦いを展開すべきである。特に谷垣総裁をはじめ自民党執行部には、記者会見や各種演説会において、事象の解説ではなく「ワンフレーズ」を多用した強烈な与党批判を展開すべきだ。その際与党であればマスコミが取り上げた事柄も、野党ならば取り上げないという厳しい現実を踏まえたアピールが求められる。
昨今の国会対策は極めて中途半端に見える。策謀に長ける「小沢民主党」に対抗するには、徹底した論戦を挑み、場合によっては徹底した審議拒否も辞さない対応が求められる。相手に「手ごわい」と思わせられる国会対策が必要だ。
民主党政権の国民へのバラマキ政策、つまり社会主義的政策展開に対して、自民党はわが国唯一の保守政党として、3.で述べたような国益を大事にする政策を堂々と打ち出し、「政権奪還」に向けての力強い気概を強力に示すべきだ。

自民党は近い将来の「政権奪還」に向けた大戦略を打ち出すべきだ。小沢民主党は参議院での単独過半数を勝ち取って、国会における主導権を獲得するため、衆議院の現議席を多少減らしても、過半数割れを避けられると判断した場合は、衆参同時選挙も辞さないという大戦略を認識すべきである。ダブル選挙があっても決してあわてない準備をすべきだ。
昨年夏の衆議院選挙の小選挙区落選者は、次期衆議院選挙の当選可能性を誰よりも持ち合わせている有力な人材である。(3)のようなダブル選挙の可能性も視野に入れて、現在200程度にとどまっている小選挙区支部長の選任を、落選組を中心に一日も早く300選挙区に及ぶように、その作業を急ぐべきだ。
各種業界や団体の中には政権与党に擦り寄るものも出てきて当然である。しかしながら野党に成り下がった自民党でも、これまでの恩義を感じて支援を継続してくれる団体も少なくない。我々は彼らを大事にするとともに、離反してしまった団体ですらもこれまでの人脈をつかって、交流を続けるべきだ。いまは我慢が大切である。



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