はじめのマイオピニオン - my opinion -
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逆風の中の自民党

 先般行われた東京都議選、自民党にとって厳しいものだった。都議会第1党は回復したものの、都民ファーストとは2議席という僅差である。選挙前には50議席は堅いと言われていたが、33議席という予想外の結果になった。自民党と公明党を合わせて56議席となり、過半数の64議席に遠く及ばなかった。

 原因は油断ではないかと指摘する向きもあるが、もっと深刻ではないか。目先の問題としては、観客を入れてオリ・パラの開催を強行しようとしていたことに批判が集まったこと。東京では新規感染者が減らず、むしろ増加気味なことに無策を感じたこと。これまでの度重なる時短休業要請で、飲食店はじめ多くの都民に嫌気が差したこと。ワクチン接種を拡大した矢先、ワクチン不足で予約が一時中断するなど、不手際が目立ったことなどだ。批判の多くは都政よりも国政に向けられていると思って間違いない。

 さらに根本的な原因を探ると、過去の政府・自民党をめぐる不祥事に突き当たる。森友問題が赤木ファイル公開で再燃したこと。桜を見る会やカジノ疑惑、河井夫妻の大規模買収事件などでは、未だ明確な決着が付いていない。これらは自民党や安倍政権内部の、驕りや油断の象徴であり、ボディブローのようにジワジワと体力を失わせつつある。

 確かにコロナ禍は我が国にとって、100年ぶりあるいは初めての経験であり、如何なる政権であっても難題だが、後手後手に回ってしまっことは明らかだ。立憲民主党を筆頭とする野党勢力が、国民に響く明確な対立軸を示し切っていないので何とか持ち応えているが、選択肢となりうる政党があれば、国民の支持は雪崩を打ってそちらに移動するはずだ。選挙区を回っていて、かつて自民党が下野した時に似た重苦しい空気を感じた議員は私だけだはないはずだ。政権交代も孕んだ危機的状況にあることを、政府与党は肝に銘じなければならない。

 起死回生を図るためには、どうしたら良いか。大きなテーマとしてはあらゆる財政や税制
の手立てを使って貧困や格差をなくし、「誰一人取り残さない社会」を作ること。行政のデジタル化を確実に進め、国民の利便性を飛躍的に高めること。カーボンニュートラルを軌道に乗せること。女性の活躍を阻害するあらゆる慣行や制度をなくすこと。そして政治家の様々な不祥事を徹底的に謝罪し、再発防止策をしっかり構築することである。

 目の前の対策としては、オリパラ開催による感染拡大を防ぎ、兎に角無事に終わらせること。ワクチンの供給と接種を迅速に行い、一日も早く集団免疫ができる程度まで推し進めること。ワクチン接種による死亡や障害が残った方々に迅速に補償すること。時短補償や休業補償が早く確実に届くよう、自治体が迅速丁寧な対応をすること。そして自民党全員が国難の事態をしっかり受け止め、強い危機感を持ってことにあたることである。

 先の都議選で激減が予想されていた都民ファーストを、ここまで守った小池知事の手腕は見事である。4年前の「希望の党」騒動では見事に失敗したが、今回の立ち回りを見ると、決して侮れない。都議会に限って言えば、自公で過半数が取れないのであれば、考え方が比較的近い都民ファーストと連携することは、現実的ではないか。

 また小池知事自身が国政復帰を否定しても、小池氏やそれを支援する保守中道勢力が、国政に影響を与えても不思議ではないし、可能性は十分ある。この勢力が国政の野党に向くのか、与党に向くのかによって、今後の政局が大きく変わるかも知れない。その意味で先日の中谷発言を訝しく捉える向きもあるが、私は正鵠を射た発言だと思う。コロナ禍における政治的混乱を避け、政局を安定させるためには、有力な選択肢となりうるはずだ。

[ 2021.07.12 ]