はじめのマイオピニオン - my opinion -
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高校教育の新たな展開

 学校教育における授業内容のバイブルとも言える学習指導要領が、幼稚園(教育要領)、小学校、中学校と改訂され、この度は高校の学習指導要領の改訂が検討されている。中学校のそれとも関連するとともに、大学入試センター試験に代わる新テストの動向にも強い影響を与えるものだ。

 改訂の主要命題は「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」にあるが、具体的ポイントは言語能力を高める教育、理数教育、伝統や文化に関する教育、道徳教育、外国語教育、職業教育それぞれの充実など、多岐にわたる内容となっている。

 「主体的・対話的」の意味するところは、これまでの知識詰め込み型や教師が一方的に授業展開するのではなく、生徒たちが自ら問題を設定し、ディベートやグループ討論、意見発表などにより、主体的に解答を見出していくという、いわゆる「アクティブ・ラーニング」を目指すものだ。

 このような生徒たちの自律的な活動が最も現れるところは、主権者教育や消費者教育を盛り込んだ新しい教科「公共」である。若い人々が自立した社会の構成員となり、また賢い消費者として行動してもらうには、知識を与えるだけでは駄目で、自ら考え行動する態度が極めて重要になる。

 社会のグローバル化やAI化という大きな変革を乗り切るためには、生徒たちがこのような能力を自ら身に付けることが不可欠で、今回の改訂は理にかなったものと思う。しかし問題は教員側がこのような授業の大変革に対応できるかどうかだ。現職の教員はもとより、教員養成課程においても、教員が一方的に授業を取り仕切るのではなく、生徒たちとともに考え、議論し、結論を見つけるまでサポートする態度を身につけなければならない。

 私が関わっている作新学院高校では、昨年から「アカデミア・ラボ」という施設を作って、アクティブラーニングを主に展開する授業を始めている。曲線をふんだんに使い、ガラス張りのユニークな建物だ。中の机も台形になっており、組み合わせによって、円形にもハの字にも自由に形作ることができる。

 当初は生徒たちがアクティブラーニングに馴染めないのではと心配したが、その施設に入ると人が変わったかのように、自ら積極的に議論する姿が見られた。むしろ教師の方が戸惑うくらいである。教育における環境の力がとても大きいことを経験した。

 もちろんこのような特別の施設を作らずとも、教師の態度一つによって、生徒たちの化学変化を起こさせることは、十分に可能ではないだろうか。生徒が変わるためには、まず教師が変わらなければならないことを痛感している。

[ 2018.01.29 ]