はじめのマイオピニオン - my opinion -
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トランプ政権とアメリカ経済

 昨年11月のアメリカ大統領選挙でトランプ氏がまさかの当選をしてから、アメリカ経済はにわかに活気付いてきた。トランプ氏が剛腕なビジネスマンの出身であること、就任後の経済政策として、4.4兆ドルにのぼる大幅減税や、1兆ドルにのぼるインフラ投資を断行することを明言しているため、金融市場をはじめとして期待感が高まっている。

 「トランプバブル」とも言えるアメリカ経済の活況の影響は、日米間の金利差に伴う円安の進行とも合間って、日本の株式市場や金融市場にも久しぶりの底堅さが戻りつつある。しかしこのような状況はいつまで続くのだろうか。トランプ大統領スタート後は、早晩不確実な状況が現れるのではないかと危惧している。

 まず直面するのは連邦議会との関係である。上下両院で共和党は多数を形成しているが、共和党内部にはまだ一定数の反トランプ陣営が存在しており、減税案やインフラ投資案に対しては、大幅に値切られる可能性がある。また大統領選挙の際に強調してきた保護主義への傾斜により、アメリカ経済にダメージを与える恐れがある。

 アメリカの大手自動車メーカーの多くは、メキシコの安い労働力を使い、NAFTAによる関税ゼロを利用して、本国に廉価な自動車を供給してきた。これがアメリカ国内の雇用を奪っているとして、トランプ氏は執拗に批判してきた。先日もこれに恐れをなして、フォード社はメキシコでの新たな工場進出を断念している。

 口先介入はアメリカに限らず、メキシコに進出する日本のメーカーにも及んできた。新たな工場進出を計画するトヨタがまず槍玉に上がっている。このような進出は必ずしもアメリカ国内の雇用を奪ってはいないが、トランプ氏の勢いにはなかなか抗し切れなくなっているのも事実である。

 今後トランプ政権は「アメリカ第一主義」を掲げて、NAFTAの再交渉を含めて保護色を強める恐れがある。メキシコ進出企業の多くがアメリカ本土に回帰する可能性が高いが、一時的に国内雇用が増えこそすれ、中長期的には高い買い物をさせられる羽目に会うだろう。

 さらには金利上昇圧力の高まりにより、ドル高の一層の進展が予想されるが、輸出品の割高感が国内産業にダメージを与えることも、考慮しなければなるまい。

 トランプ次期大統領が選挙中に掲げた、強硬な対外政策やモンロー主義復活は、大統領就任後はややマイルドになる期待感はあるが、人間はそう簡単に変われるものではない。「トランプバブル」の行く末をもう少し慎重に見定めるべき時期である。

[ 2017.01.09 ]