はじめのマイオピニオン - my opinion -
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人権外交と児童労働

 中国新疆ウイグル自治区においては、以前より中国政府による強制労働などをはじめとする人権侵害が顕著であるとして、アメリカやEUから厳しい目が向けられている。実際にそこで生産される綿製品を使っている企業に対して、不買運動や厳しい調査が行われ、日本でもワールドやミズノ、ユニクロなどがその製品を使わないように慌てて対応した。人権侵害は世界共通の由々しき問題であり、各国が共同歩調で対処する必要がある。

 一方古くからある人権問題といえば、「児童労働」がある。「児童労働に関するILO条約(1973年と1999年)」では、15歳未満(途上国は14歳未満)、つまり義務教育を受けるべき年齢の子どもが教育を受けずに大人と同じように働くこと、18歳未満の危険で有害な労働に従事させることを「児童労働」と定義している。

 ILO(国際労働機関)の調査によれば、現在でも約1億6000万人の子どもたちが労働に駆り出されているというが、アフリカ、南アジア、東南アジアなどに児童労働が多く見られる。UNICEF(国連児童基金)がこの問題に正面から取り組み、児童労働を助長させないため、途上国の商品を安く買わないという「フェアトレード」が、エシカル消費として推奨されている。しかしなかなか改善することができない。

 貧しい途上国では子どもたちが依然として貴重な労働力であり、その稼ぎで生計を立てている人々が多く存在する。「背に腹はかえられぬ」という主張をする向きも多い。児童労働を根本的に無くしていくためには、やはりその国の政治的安定やODAなどによって、経済状況を少しでも良くしていくことが望まれる。息の長い問題だが、地道に取り組んでいかなければならない。

 人権外交は一点集中で問題を先鋭化することも、時には必要である。各国が集中的に取り組み、実効性のある措置ができるからである。しかしその一点ばかりに関心が集まり、他の問題が忘れられたり、疎かにされることはよくない。より複眼的かつ広い視野で、人権外交を進めることが大切ではないだろうか。

[ 2021.07.19 ]