はじめのマイオピニオン - my opinion -
船田はじめが毎週月曜日に提言するメールマガジン。購読ご希望の方は下記フォームからお願いします。
お名前
メールアドレス
    配信停止申込
いま一度公務員倫理規程を問う

 「国家公務員は全体の奉仕者であり、一部の人々の利益を与える行為はしてはならない」と、かつて学校で習ったことを覚えている。ところが大手銀行が当時の大蔵省幹部を、新宿のいかがわしい飲食店に繰り返し接待していたことが平成10年(1998年)に発覚して、同省の幹部が逮捕されるという、「大蔵省接待汚職事件」に発展した。その責任をとって当時の三塚大蔵大臣と松下日銀総裁が引責辞任した。
 
 この事件をきっかけとして「国家公務員倫理法」が平成12年に施行され、それに基づく倫理規程も制定された。その後規程は何度か改正されて今日に至っている。人事院の解説によれば、倫理規程では国家公務員が、許認可等の相手方や補助金等の交付を受ける者など、国家公務員の職務と利害関係を有する者(利害関係者)から金銭・物品の贈与や接待を受けたりすることなどを禁止しているほか、割り勘の場合でも利害関係者と共にゴルフや旅行などを行うことを禁止している。

 また細かいことになるが、国の補助金や経費で作成される書籍等、国が作成数の過半数を買い入れる書籍等について、国家公務員が監修料等を受領することも禁止している。その後利害関係があろうとなかろうと、公務員が民間人と酒食を共にするときは、割り勘であっても1万円を超える場合は届出をすることも追加された。

 それから20年が過ぎたが、今回は倫理規程違反に該当する事案が総務省と農林水産省で相次いで発覚し、極めて残念な事態となった。総務省の幹部接待は東北新社とNTT、農林水産省幹部の接待はアキタフーズである。総務省の場合は両社とも許認可が絡むのは明らかで、アキタフーズは鶏卵事業にアニマル・ウエルフェア(動物福祉)が導入されないように働きかけるための接待である。特に東北新社のケースは菅総理のご長男が絡む案件なので、政治的にも大きくクローズアップされてしまった。

 この度の不祥事の発生の原因は、公務員のモラルの欠如であることは言うまでもないが、倫理規程の趣旨が幹部にきちんと理解されていなかった節がある。特に「利害関係者」を狭く解釈していた可能性がある。しかし総務省は電波や放送・通信行政を所管する役所であり、東北新社もNTTも直近の許認可には関わらないとしても、いずれ利害関係になる確率は極めて高い。

 今後の再発防止に資するためには、まず国家公務員倫理規程を所管する人事院が、これまで以上に研修やアピールを頻繁に行うべきである。また許認可や補助金行政を所管する官庁が、「利害関係者」の解釈をできる限り幅広く取り、「李下に冠を正さず」の姿勢をより鮮明にしなければならない。

 安倍政権における役人の忖度や公文書の改竄などで、国民の役人に対する信頼感が著しく低下したことに加えて、長引くコロナ禍の中で、国民の役人への眼差しは益々厳しくなっている。今こそ「国家公務員は全体の奉仕者である」との原点に立ち返らなければ、我が国はさらに二流、三流国家の道を突き進むことにならざるを得ない。

[ 2021.03.08 ]