はじめのマイオピニオン - my opinion -
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アメリカ民主主義の再構築

 昨年11月3日のアメリカ大統領選挙投票から60数日が経ち、ようやくバイデン次期大統領就任が確定した。その手続きのため、各州ごとの選挙人の投票行動を確認する「上下両院合同会議」(ここで次期大統領が正式に決まるのだが)が議事堂(キャピタル・ヒル)で開かれていたが、その真っ最中にトランプ大統領の扇動とも取れる発言に促されて、多数の群衆が議事堂を取り囲んだ。一部の群衆が暴徒化して、議事堂内部に侵入して4人が犠牲となった。

 この事件を見て直ぐに思い出したのは、1960年の日米安全保障条約の改定における日本国内の混乱(60年安保騒動)である。「安保反対」を唱える多くの群衆が国会周辺を取り囲み、警官隊と激しいもみ合いとなり、樺美智子さんが犠牲となる悲劇が生じた。当時まだ日本は戦後の混乱期にあり、左右のイデオロギーが激しく対立していた頃である。しかし同じような光景が、現代のアメリカに見ることになるとは、とても信じられないことである。

 皮肉にもトランプ大統領側近のペンス副大統領が、軍隊を派遣して暴徒を制圧した。トランプ大統領を巡っては、パリ協定からの離脱、イラン核合意からの撤退、国際世論に反しエルサレムをイスラエルの首都と認める暴挙。国内では移民排斥や人種差別の助長など、内外の秩序を悉く壊して来た。そして今回の深刻な事態を大統領自身が作り上げ、政権末期を汚すこととなった。

 もちろんこのような事態はトランプ大統領になってから初めて起こったことではなく、従来からのアメリカ社会の分断や混乱、対立を大統領が反映したものであり、殊更にこれらをクローズアップしたものと言えよう。したがってバイデン政権になってもこれらの課題が一気に解決するとは思えず、新政権になっても重くのしかかる課題になることは間違いない。

 ただバイデン政権のベクトルは、分断を助長する方向では決してなく、協調や癒しという方向に向かっていくことは間違いないと思う。トランプ政権によってズタズタにされたアメリカの民主主義が、新政権によって少しづつ修復されていく姿を、世界は気長に待つ必要があるのではないだろうか。

[ 2021.01.11 ]