はじめのマイオピニオン - my opinion -
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国際天文学連合100周年に思う

 国際天文学連合(IAU)は1919年に創設された。天文学のほぼ全ての分野を網羅する国際的な研究者の組織である。日本がチャーターメンバー7カ国の一つだったことはあまり知られていないが、とても誇りに思う。もちろん私は専門家ではないが、天文が趣味であったのと、ハワイのすばる望遠鏡の建設計画を手伝ったことや、小惑星衝突を監視するスペースガード計画関わっていることから、先日は同連合の100周年行事に招かれた。研究者からは基礎研究に対する予算を削らないでほしいとの切実な願いを聞かせてもらったが、私からは、天文学がこれからもわくわくドキドキする話題を提供してほしいと激励した。

 天文学は確かにすぐには役立たない学問かも知れない。しかし人類の歴史の中で、私たちのものの考え方に、とても大きな影響を与えたことは間違いない。

 今では常識となっている「地動説」は中世のドイツで哲学者コペルニクスが初めて唱えた。その後イタリアの天文学者ガリレオも唱えたが、当時権勢を誇っていたカトリック教会は、それを認めようとはせず、頑なに「天動説」を守り続けた。近世になり恒星の年周視差が観測されて、地球が太陽の周りを回っているとの確たる証拠が示され、ようやく地動説が正しいと認められた。まさに天と地がひっくり返ったわけだが、これらの動きを「コペルニクス的展開」と称している。

 1969年にはアポロ11号が人類を初めて月に送り込んだ。その際月から見た地球の写真が送られたが、それは漆黒の宇宙に浮かんだ青い小さなボールだった。それを見た人々には、地球には国境線もなく、戦争など意味のないことだとか、地球環境は有限だという思想が、強く植えつけられた。これも現代における「コペルニクス的展開」ではないだろうか。

 天文学は総じて基礎研究の部類に入る。そして多くは人類や社会にすぐに役立つものではないが、いずれは社会に役立ち、人々の考え方を根本から変えるパワーを持っている。天文学の発展にこれからもお手伝いして行きたい。

[ 2019.06.10 ]