はじめのマイオピニオン - my opinion -
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教育の無償化と財政再建

 突然の解散風が現実のものとなってきた。今なぜ解散か?という大義名分の一つに、「教育の無償化」あるいは「全世代型の社会保障制度」への転換という公約が浮き上がっている。これまでの社会保障制度は高齢者に集中していた。もちろんこれからもこのスタンスは大切だが、欧米諸国に比して若年層への所得再分配が少ない我が国の現状も確かだ。その意味でこの公約は今後とも追求すべきテーマである。

 しかしこの公約にはいくつかの留意点もある。まずは「教育の無償化」の定義を明確にすべきことだ。いま政府与党にあっては「幼児教育の無償化」の取り組みを続けているところだ。また高等教育の分野では、貸与型奨学金に加えて、今年から給付型奨学金の導入を始めたばかりである。

 子どもの貧困を是正するとともに、家庭の経済事情によって進学を諦めることのないような制度を作ることは、まさに急務である。しかしながら全ての学校段階で無償化を求めることや、所得制限を設けない無償化は「ばらまき」との誹りを免れないのではないか。無償化の対象を明確にするとともに、当面は現在の施策をさらに一歩進めるところから始めるべきである。

 もう一つの留意点は、その財源をどこに求めるかである。小泉進次郎氏らは「子ども保険」の導入によって、幼児教育の無償化を実現したいとしている。一方安倍総理は、消費税2%アップによる増収分の5分の1、約1兆円を無償化に充てたいとしている。消費税増税に関するかつての3党合意は、増収分の5分の4を財政健全化に充て、残りを社会保障の増加分に充てるとしていた。

 もし安倍総理の考えを踏襲するならば、財政健全化目標あるいはプライマリーバランス達成年度を、後にずらさなければならない。将来世代にツケを回すことになるが、その世代も恩恵を受けるなら問題はないとの考え方もある。しかし「ツケを回す」マインドが一度昂じると、なかなかそこから脱却できない怖れがある。

 財政健全化目標を先送りするのであれば、若年層への所得再分配を増やし、将来世代の能力を高めるという目標を明確に示し、国民の理解を得ることが極めて大切である。

[ 2017.09.25 ]